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令和8年度宮本常一記念館公開講座「宮本常一 昭和10年周防大島調査ノートを読む」の開催について
活動報告|2026年7月13日|板垣優河
宮本常一記念館では、周防大島出身の民俗学研究者宮本常一ゆかりの資料を保管し、展示しています。当館で扱っている資料を大別すると、文書資料・蔵書資料・写真資料・民具資料がございます。
これまで宮本常一の資料というと、どちらかといえば写真資料が注目されてきました。しかし、宮本が民俗調査にあたって現地で作成した文書資料も、あるいは写真資料以上に当時の生活文化を克明に物語るものです。そこで、今回の講座では、当館で発行した『宮本常一農漁村採訪録28 昭和10年周防大島調査ノート』をテキストにして島の生産活動や暮らしを紹介するとともに、宮本による民俗調査の手法を検討することにしました。
講座は2回に分けて行うこととし、第1回を令和8年7月11日に開催しました。この回では、宮本が昭和10(1935)年8月に浮島で作成したイワシ網等に関する記録を読み進めました(写真1)。
例えば、宮本は浮島でイオドリと称するイワシ網中の魚が入る袋の部分について、「イオドリハ、タクト丈夫デアル」と記録し、また「イドリヲホス」として「ナダラ」のスケッチを描いています(写真2)。イオドリは昭和30年代までは木綿製で、それ以降はナイロン製に変わりました。木綿製の頃はそのまま船に積んでおくと蒸れて腐ってくるので、潮で洗ったり、大きな釜で焚いたりしてからナダラにかけて干しました。

さらに、宮本は「タルガヒライタホド、イワシガタクサンハイツテイル。フクロノタルハ、六ツツイテイル」とも記録しています。海の中でイオドリを浮かせるために、イオドリの奥にはウキダルを横並びに4個付け、さらに中ほどにもウキダルを2個付けました。奥に付けている4個のウキダルは、それぞれ2mくらいの間隔で海面に浮きますが、魚がたくさん入るとイオドリが膨張し、その間隔が3.5mくらいにまで開きます。その様子を見て、魚がどれだけイオドリに入っているのか、見当を付けることができました。
以上は、筆者が浮島で実際にイワシ網を操業されている方からうかがったことです。宮本の記録を読んでいると、しばしば分からない言葉や言い回しにぶつかることがありますが、それらは現地で聞取りをすることによって解決の糸口が見つかる場合があります。
浮島では現在もイワシ網が島の主幹産業として行われています。したがって、宮本の調査ノートを、フィールドワークを行いながら分析することで、ここ100年ほどの時間スケールの中でイワシ網の技術や経営形態、それらの変遷過程を比較的高い精度で描き出すことができるようになります。講座ではそうした宮本の文書資料がもつ学問的な意義や可能性についてもお話ししました。
次回の講座では、主として沖家室島の一本釣りに関する記録を読み進めます(写真3)。皆さまのご参加をお待ちしております。

■令和8年度宮本常一記念館公開講座(第2回)のご案内
【日 時】令和8年8月29日 13時30分~14時30分
【会 場】東和総合センター 大ホール ※宮本常一記念館の隣の建物です。
【講 師】板垣優河(宮本常一記念館学芸員)
【定 員】50名(予約不要・先着順)
【参加料】無料。但しテキストとして『宮本常一農漁村採訪録28』の購入ないし持参が必要です。テキストは当日受付でも販売します(1冊1,000円)。
