宮本常一記念館

学芸員ノート

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宮本常一記念館20周年関連事業

活動報告|2025年4月1日|板垣優河

 山口県周防大島町平野に所在する宮本常一記念館(周防大島文化交流センター)では、宮本常一が遺した資料を保管し、展示している。当館は国や県の助成を受けた「文化教育交流促進施設」として平成16(2004)年5月に開館し、令和6(2024)年で20周年を迎えたところである。この節目に絡めて、当館では令和6年度において四つの事業に取り組んだ。

 一つ目は、令和6年12月7日に周防大島町東和総合センターを会場にして開催した「宮本常一記念館20周年記念講座」である。講座は2部構成で行い、第1部では公益財団法人日本離島センターの森田朋有氏をお招きし、「宮本常一と日本離島センター」のテーマでお話いただいた。第2部では筆者(当館学芸員)が「宮本常一関係資料の研究と活用」のテーマで話した。当日は60名ほどの参加を想定していたが、予想を超え、町の内外から約70名もの方に参加していただいた。一連の講座により、民俗学研究者に留まらない宮本の側面を引き出すとともに、当館所蔵資料がもつ社会的な意義や学問的な可能性を示すことができたと考えている。

宮本常一記念館20周年記念講座の様子
【写真1】宮本常一記念館20周年記念講座の様子

 二つ目は、展示室のリニューアルである。先述の記念講座の開催に合わせ、講座と同日にリニューアルオープンを果たした。当館で扱っている資料を大別すると、文書資料・蔵書資料・写真資料・民具資料に分けられる。それらをまとめて、「宮本常一関係資料」と総称している。今回のリニューアルでは、この一連の資料を窓口にして、宮本常一の仕事や周防大島をはじめとする農山漁村の生活文化が体系的に分かるように工夫した。

【写真2】リニューアルした展示室
【写真2】リニューアルした展示室

 三つ目は、周防大島町政策企画課との協同による「周防大島360~新たな見どころバーチャル体感~タイムトラベル編」のコンテンツ作成である(下記リンクより閲覧可能)。宮本が町内各地で撮影した写真を60枚選定して解説を付し、エリア内に設置されたバーコードをスマートフォンで読み込むと、昔の写真がナレーションとともに表示されるようにした。これにより、周防大島の今昔をデジタルで体験することが可能になった。令和7年1月18日から3月16日にかけては、このコンテンツを利用したスタンプラリーが開催された。

 四つ目は、当館ホームページのリニューアルである。セキュリティに問題があることから長らく閉鎖していたホームページを再開すべく、公募型プロポーザル方式によるリニューアル作業に取り組んだ。特に「宮本常一データベース」の拡充を図り、宮本が撮影した約10万点の写真をインターネット上で閲覧できるようにした(リンクは下記)。ホームページは令和7年4月1日より公開している。

 このたびの20周年関連事業を通して、筆者は改めて宮本の遺した資料が学問的にも社会的にも有用度の高いものであることを確認できた。今後も、「宮本常一関係資料」を複合的に利活用しながら、周防大島をはじめとする農山漁村の生活文化を調査し、当館ならではの方法で発信していきたいと思う。

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